地球儀を回して世界100周

職場や旅先から世界をほんの少しだけチラ見してみる

マレーシアのタクシードライバー

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「笑ってコラえて」の名物コーナーじゃないけど、初めて訪れた街で最初に出会った人(自分の意識内に入ってきた人)というのは印象に残るものである。私にとってある意味最強だったのは神奈川県横須賀市だ。なんて言っても突然見ず知らずのおばあさんに「お嬢ちゃんかわいいねぇ!かわいいねぇ!」と言われた挙句、息を吹きかけられたのだから。その瞬間からしばらく横須賀という街に恐怖を抱いて歩いたのは言うまでもない。

(その後いい思い出ができたおかげで、横須賀にはいいイメージしかないけれど)

 

今年の初めにマレーシアへ行った。

といってもカンボジアからの帰りにトランジットで、入国してちょっとマレーシアを覗いてみようという程度だった。時間的にペトロナスツインタワーまでは行けそうになかったので、プトラジャヤという街にあるピンクのモスクを見に行くことにした。

 

クアラルンプール国際空港からはタクシー。配車カウンターでモスクを見て空港に戻ってきたいと言ったけれど、片道じゃないとダメだと言われたので仕方なく片道のチケットを買った。厳密にいうとこの配車カウンターにいたお姉さんが最初に話したマレーシア人だけど、いかにも外国の空港職員と言った雰囲気だったのでそこは割愛する。

 

私たちの担当になったのは帽子をかぶったマレー系のおじさんだった。プトラジャヤのモスクへ、と言うと2つあると言われたけど、ピンクのほうと言うとすんなり通じた。マレーシアは英語が通じるのでそれなりにコミュニケーションはとれる。

トランジットの時間を使ってマレーシア見物をしていることを知ったおじさんは整ったプトラジャヤの街並みについてあれこれ説明してくれ、途中で通るきれいな橋では車を止めて写真を撮らせてくれた。そうこうしているうちに目的地であるピンクのモスクに着いた。約束していたのはここまでである。でも着くなりおじさんは「中を見ておいで」と言った。「その間ここで待っているから」と。

 

その日は金曜日だったので、イスラム教の礼拝の日だからダメなんじゃない?と聞くと大丈夫と言う。結果から言うと見学時間を過ぎており、中を見ることは叶わなかった。「ついてないね〜」と笑いつつ、おじさんはすぐ近くにある大統領官邸を案内してくれた。それだけじゃない。空港まで戻ってくれるどころか、その途中でわざわざ遠回りをして友達が行きたいと言っていたところまで行ってくれると言う!最初は「そこ、ルートから外れてるから…」って言ってたのに!

 

聞いてみると、おじさんは留学だったか仕事だったかで、昔日本に住んでいたことがあるらしい。そしてそこですばらしい先生と出会ったことで、数十年が経った今でも日本人に大変な恩義を感じているとのことだった。

「だから、君たちの喜ぶ顔が見たいんだよ」

 

帰りは渋滞に巻き込まれた。東南アジアの国ではよくある話だ。話のネタに、ちょこっとマレー語を話してみた。「渋滞か〜なんてこった〜」ぐらいだったけど(笑)やっぱり現地の言葉を話すと相手との距離がぐっと近くなる。マレー語ってインドネシア語と似ているんだけど、インドネシアに住んでいた時さんざん渋滞にはうんざりさせられたことがこんなところで役に立つとは!

インドネシア語なんて挨拶程度しか話せないけど、全然知らないのと少しでも知っているのとは大違い。だから私は旅行へ行くときは最低限「こんにちは」と「ありがとう」は覚えていくようにしている。

 

友達の行きたいところへ連れて行ってもらった後、空港まで送り届けてもらった。リンギットを持っていないのでドル払いでいい?と聞いたらOKしてくれ(ダメだったらどうするつもりだったんだ、私たち…笑)、最後にまたマレーシアへ来るときはご用命を!とばかりに名刺を頂いた。

 

素敵な出会いがあると、それだけでその国の印象は良くなる。おじさんにとっての日本がそうだったように、私にとってもマレーシアは「今度はゆっくり訪れたい国」になった。

 

仕事柄、私は外国の人にとって「初めて接する日本人」になることがよくある。もしかしたら一人の人の日本という国に対する印象を変えてしまう存在なのかもしれない。

 

帰りの飛行機を待つ空港のフードコートでナシ・レマッを食べながら、改めて気の引き締まる思いだった。

 

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(ココナッツミルクで炊いたご飯、ナシ・レマッ)